ZOOM MultiStompシリーズは音痩せするのか?

2023年05月17日

検索エンジンにて「ZOOM MS-70CDR 音痩せ」のワードで
検索される方が結構いらっしゃるようで、
当ブログにもそのワードでのアクセスが後を絶ちません。
価格が安いので「どうなの?」って
不安に思われる方が多いのかなという気もします。

img-230517_01.jpg

MultiStompシリーズのMS-70CDRは
私もずっと使っておりますが、
個人的には音痩せが気になるような印象はありません。
しかし「感覚」ってのはアバウトなので、
今回良い機会なので検証してみました。


検証方法

img-230517_02.jpg

ピンクノイズを録音したルーパーを用い、
ルーパーからオーディオI/Fに直で繋いだ音と
間にMS-70CDRをノンエフェクトで挟んだ音を
スペクトラムアナライザで視覚化して比較します。


検証結果

[ルーパー→オーディオI/F直]
img-230517_03_direct.jpg

[ルーパー→MS-70CDR→オーディオI/F]
img-230517_04_ms-70.jpg

めちゃくちゃ優秀です。

公式でトゥルーバイパスを謳う説明は見たことがないので、
多少の変化はあるかと思いましたが、
若干ゲインが落ちるぐらいでほぼ変らず。

このゲイン落ちの原因については、
間にペダルが増えたことによる 接点の増加と
パッチケーブルの長さ分の抵抗でしょう。
これはトゥルーバイパスのペダルでも同じなので、
私の中では音痩せの定義には入れてないです。


補足

今回ルーパーから出力したピンクノイズで計測しましたが、
ルーパーから出力した信号はギターからの出力よりも
インピーダンス値は低いと思うので、
信号が劣化しにくいという事もあるかもしれません。

img-230517_05.jpg

その為、検証結果はこのようになりましたが
ギターから直でMS-70CDRに繋いだ場合においては
別の結果になる可能性はあります。

それを検証するには
ピンクノイズの出力信号のインピーダンスを
ギターに近い値に変更する必要がありますので
そこまでは検証できてません。

ともあれこの検証結果から
2台目以降の接続であれば、
信号が他のペダルのバッファを経由し
ローインピーダンス化されるので、
音痩せは無いものと思って問題ないと考えてます。

また今回使用したMS-70CDRに限らず、
MS-50GやMS-60B等、
ZOOMの他のMultiStompシリーズについても
基本的な構造は一緒だと思うので、
恐らく同じ結果になるものと思われます。


【関連記事】
・ZOOM MS-70CDR

タグ:MS-70CDR

BodyRez VS Session

2023年05月09日

エレアコの音を生っぽくするペダル
TC ELECTRONICのBodyRez
L.R.BAGGSのSessionの2種を比較します。

img-230509_01.jpg

先ずはTCのBodyRezです。
基本的にはエンハンサーという事なので
歪の原理で倍音を強調してくれてるのかなと思います。
また倍音の強調エフェクトと合わせて
マイク録りしたアコースティックギターの音のような
ドンシャリ傾向の周波数特性に補正します。
摘まみを上げると高/低域を持ち上げつつ、
中域を抑えるような動きをします。

対してL.R.BAGGSのSessionですが、
こちらはsaturateとcomp eqのノブがあります。
saturateに関してはその名の通り
歪ませて倍音を強調してるのかなとは思います。
具体的な仕組みまではわかりませんが、
エンハンサーであるBodyRezと
似たような原理なのかなと予想してます。
こちらも周波数特性はドンシャリ傾向に補正されますが、
「saturate」を上げると低域が、
「comp eq」を上げると高域が上がりますので、
ワンノブのBodyRezより少し自由度が高いです。

両者とも倍音成分を持ち上げる効果と併せて
中域が突出しがちなエレアコのサウンドを
生のギターをマイキングした音に
EQ処理で寄せてるような挙動です。
故にギター本体のプリアンプにミッドカットの機能や
モデリング系のエフェクトが内蔵される場合は、
気を付けないと極端なドンシャリになります。


サウンド比較(1)

まずはアンダーサドルタイプの
ピエゾにかけた場合の音の変化をみてみます。

私のギターに付けてるピックアップは、
そもそもがドンシャリ気味のサウンドで、
中域が突出したようなセッティングにはできませんので
今回はフラット気味のセッティングで比較しました。


【エフェクトなし】
img-230509_02.jpg




【TC ELECTRONIC BodyRez】
img-230509_04_rez.jpg



img-230509_03.jpg

(※ペダルのセッティングは画像参照)


【L.R.BAGGS Session】
img-230509_06_se.jpg



img-230509_05.jpg
(※ペダルのセッティングは画像参照)



BodyRezもSessionも煌びやかなサウンドになり、
どちらも近い方向性のサウンドではありますが、
BodyRezはワンノブで高/低域が一緒に動きます。
しかしマイキングしたアコースティックギターの音は、
少しドンが強めのドンシャリです。

img-230509_07.jpg

低域が強めのギターであればバランス的に
BodyRezの周波数特性は合うんじゃないかと思いましたが、
今回のようなフラット目の出音にかけると、
上の図のようにハイ上がり気味の音になりますので、
可能であれば手元のプリアンプ等で調整するのが良さそう。

次にSessionについてです。
Sessionは高/低域別々に調整できますので
その辺はギターに合わせて融通がききます。
しかしこちらは中域を抑えるような効果はありませんので、
中域が出すぎてるギターには向かない気がします。



サウンド比較(2)

先の比較とは逆にギター側で音を作り込み、
エフェクター側をフラット気味にセッティングした音で比較。

こちらは作り込んだ音に対する効果を見るため、
ピックアップ側のセッティングは
マイク/ピエゾのバランスをセンター位置で計測しました。

各ペダルのフラット設定は
スペクトラムアナライザーを用いて
ピンクノイズで計測して割出してます。
BodyRezは摘まみゼロ、
Sessionはsaturateが11時前後/comp eqゼロあたりで
ほぼフラットな出音
になります。

この使い方であれば、
ギター側のプリアンプのミッドカット機能や
モデリング系の内臓エフェクトとも併用出来ます。


【エフェクトなし】
img-230509_08.jpg




【TC ELECTRONIC BodyRez(フラットセッティング)】
img-230509_09_rez.jpg




【L.R.BAGGS Session(フラットセッティング)】

img-230509_10_se.jpg




BodyRezはフラットセッティングだと
出音の印象はエフェクトなしと殆ど変りませんが、
20Khz以上あたりと50hz以下が若干ですが下がりますので、
僅かですが音が締まった感じになります。

Sessionの方はフラットセッティングでも
倍音が少し付加された感じが出てくれました。
音源はピークを合わせるためにノーマライズしてますが、
その際に若干ながら全体的に持ち上がった感じがありますので、
もしかするとコンプの効果も効いてるのかもしれません。
またBodyRezについても若干のコンプ感はあるようで、
突き出した帯域がまとまる傾向にあります。



まとめ

出音に多少の違いはあれど
音の方向性はどちらも似たような印象です。
基本的には所持してるギターの特性に合わせて
使いやすい方を選ぶのが良い気がします。

私の見解ではありますが、
出音が中低域寄りのギターであればBodyRez、
フラット気味のギターであればSessionでしょうか。

どちらのペダルも倍音の強調だけでなく
EQ処理は施されてしまうので、
倍音を強調してくれるだけで良いという場合は、
通常のエンハンサーを使った方が良いのかもしれません。
ドンシャリ方向に音が変るという事は、
中域が埋もれていくという事でもあり、
音自体はか細くなっていきますので、
アルペジオメインの方などは特に注意が必要です。


今回の検証ではL.R.BAGGS Sessionは、
Session DIではなく単体ペダルを使用してます。
恐らくSession DIも同様だとは思いますが、
そこは検証できるものが手元にないので、
あえて記事中では触れてませんのでご了承ください。




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[関連記事]
・L.R.Baggs Align Series SESSION
・TC Electronic BodyRezレビュー

L.R.Baggs Anthemのボリュームコントロール

2023年05月01日


ピックアップのボリュームコントロールをいじった際、
ボリュームを下げると音が少しモッサリする気がしたので
スペクトラムアナライザを使用して検証しました。

img-230501_01.jpg
(※上記画像はイメージ画像として撮ったもので、
今回の検証時の設定ではありません。)

今回の検証はピエゾ側の設定でしてます。
ピエゾの方がマイクよりも癖がないので
スペクトラムアナライザが横並びで見やすいです。

■ボリュームMAXの音
img-230501_02_100.jpg




■ボリューム約20%の音
img-230501_03_20.jpg




ボリュームコントロールをいじってるので、
当然音量レベルも上下しますが
あくまでも「音質」の検証なので
音量は録音後にノーマライズして合わせてます。

弾いてるのが私なので多少のブレはあるかと思いますが、
結果としてボリュームを下げていくと、
100hz以下の低域が出てくる傾向が確認できました。

img-230501_04.jpg
スペクトラムアナライザーの画像を重ねたもの。
薄い色にしてる方がボリュームMAX時の計測値。


上記にアップした結果以外にも、
70%〜50%と段階に別けて計測しましたが、
ボリュームを下げた際に
高域側から徐々に減衰していくというよりは、
100hz以上の帯域は一定して下がるような感じです。

この仕様については、
音量を下げた際の迫力不足を
あえて低域を上げる事で補ってるのか
それともエレキギターのボリューム回路のように
回路自体がパッシブなのかは解りません。

ただ結果としてこういう特性なので、
逆手にとって音作りに利用する事も可能ですし、
反対に演奏中の極端なボリュームの変更は、
出音が変ってしまうので気を付けた方が良さそうです。

img-230501_05.jpg

今回検証に使用したのはAnthem StageProです。
同シリーズの無印AnthemやSLも同様である気はしますが、
その辺は検証できるものが手元にないので
もし検証した方が居られましたら、
コメント欄にでも書いていただけますと嬉しいです。



[関連記事]
L.R.Baggs Anthemのマイクゲイン調整
L.R.Baggs Anthem StageProのEQ設定
L.R.Baggs Anthem StageProレビュー(サウンド編)
L.R.Baggs Anthem StageProレビュー(導入編)